カニって養殖できないの?

先日家族で夕飯を食べている時に出た話題です。

また、水産関係の仕事をしていると、よく聞かれる質問です。
結論から言うと、カニの養殖は技術的に非常に難しいのが現状です。

そこでこの記事では、
「なぜカニは養殖しづらいのか」
「水族館では飼えるのに、なぜ食用では難しいのか」
をわかりやすく解説します。

カニは「脱皮」で成長する生き物

カニは魚のように体が大きくなるのではなく、
脱皮(だっぴ)を繰り返して成長します。

この脱皮には大きな問題があります。

タイミングが非常にシビア

失敗するとそのまま死んでしまう

環境の変化にとても弱い

養殖では「安定して成長させる」ことが重要ですが、
カニはこの脱皮の管理がとにかく難しいのです。

脱皮直後は「共食い」のリスクが高い

脱皮した直後のカニは、
殻が柔らかく、ほぼ無防備な状態になります。

このときに起こりやすいのが、共食い。

一緒に飼育すると

強い個体が弱った個体を食べてしまう、ということが、現実に頻繁に起こります。

そのため、
「1匹ずつ隔離する」
「脱皮のタイミングを完全に管理する」
必要があり、コストが一気に跳ね上がるのです。

幼生(子ども)の期間がとても長い

カニは卵から生まれてすぐカニの形になるわけではありません。

ゾエア幼生やメガロパ幼生といった、複数の成長段階を経てカニになります。

この幼生期間は

  • 水質
  • 水温

の管理が非常に難しく、
少し条件が崩れるだけで大量死してしまいます。

これも、養殖が進まない大きな理由のひとつです。

水族館では飼育されているのに?

ここでよく出る疑問がこれです。

「水族館ではカニを飼っているよね?」

これは事実です。
カニは水族館での飼育は可能です。

水族館の紅ズワイガニ

タカアシガニや、紅ズワイガニが飼育されています。

ただし重要なのは、
「展示用の飼育」と「食用の養殖」はまったく別物という点。

水族館では

  • 数匹〜数十匹
  • コスト度外視
  • 観察・展示が目的

一方、食用養殖では

  • 大量生産
  • 安定供給
  • 採算性

が求められます。
この差が、とても大きいのです。

カニの養殖は現在、研究は進んでいる

実は、カニの養殖が完全に諦められているわけではありません。

  • ズワイガニ
  • ワタリガニ

などで、研究レベルの養殖実験は進められています。

ただし、
「スーパーに並ぶレベルの量と価格」
には、まだ到達していません。

養殖出来ないから、カニは高い

私たちが普段食べているカニの多くは、
今でも天然ものです。

  • 資源量に限りがある
  • 漁獲量が安定しない
  • 養殖で補えない

だからこそ、
カニは昔から高級食材なのです。

「高いからぼったくり」ではなく、
高くなるだけの理由がある。

これは、水産の現場にいると強く感じます。

カニの養殖まとめ

というわけでカニの養殖について見てきました。

まとめると

  • カニの養殖は、現状では非常に難しい
  • 最大の理由は、脱皮・共食い・幼生管理
  • 水族館での飼育と、食用養殖は別
  • 研究は進んでいるが、実用化はまだ先

ということでした。

次にカニを食べるとき、
「なぜ高いのか」を少し思い出してもらえたら嬉しいです。