新巻鮭もセミドレス状態になっています。

春になると日本の排他的経済水域で時鮭(ときさけ)やカラフトマスの流し網漁が行われます。

そこで出てくるのが母川国主義という考え方です。

今日は母川国主義や、日本の排他的経済水域でサケ・マスを獲るときにロシアにお金を払う理由を解りやすく解説します。

母川国主義とは?解りやすく解説します。

母川国主義とは、川や湖で産卵して海に出る魚は、その魚が国のもの、という考え方です。

これは公海であっても、その魚は生まれた国のもの、という考え方です。

日本の北海道で春に獲るサケ・マスは母川国主義が適用されています。

母川国主義の背景。しかたない?当然の権利?

母川国主義の背景として、稚魚の放流や陸上の環境整備の努力があります。

日本でも鮭の放流を行われています。

また、鮭が増えるように自然環境を整えたり様々な施策、調査を行っています。

そうやって増やした鮭を沖合いで漁獲されたらたまったものではありません。

なので母川国主義も仕方ないのかもしれません。

日本の排他的経済水域でサケ・マスを獲るのにロシアにお金を払う理由。

「魚は生まれた国のもの」という母川国主義のために日本はロシアにお金を払っています。

日本の漁船が日本排他的経済水域や、公海でサケ・マスを漁獲する場合にです。

それは漁業協力の名目でお金を支払っています。

毎年、金額と総量をロシアと協議して決めています。

総量も何千トンと決められています。

金額や総量の例や、過去の交渉については後で解説します。

母川国主義でロシアにお金を払う条件は?

それではどのような時にロシアにお金を払うのでしょうか。

春に北海道に近づく時さけ(シロサケ)やカラフトマス、紅鮭、キングサーモンに対してお金を払います。

まとめると、ロシアにお金を払うのは

  • 春に獲るシロサケ、カラフトマス、紅鮭、キングサーモン
  • 春、流し網で獲る時のみ
  • 定置網は問題ない

ということです。

定置網の場合は北海道に遡上する魚だと評価されるので、お金は払わないで済みます。

2018年の春の鮭鱒ロシアとの交渉や協力費の金額など具体例

それでは2018年の会議の様子をみていきましょう。

2018年4月2日から6日まで,東京において,日ロ漁業合同委員会第34回会議が開催されたそうです。

外務省のページ
以下、上記外務省サイトからの引用です。

(2)今回の会議では,我が国200海里水域内における2018年の我が国漁船によるロシア系さけ・ますの漁獲量等について以下のとおりとすることで一致しました。

ア 漁獲量

からふとます,べにざけ,ぎんざけ,ますのすけ 計1,550トン(前年同)
※べにざけ,ぎんざけ,ますのすけについては,3種合わせて1隻当たり1トン
以内。
しろざけ  500トン(前年同)

イ 漁業協力費

2億6,484万円から3億12万円の範囲で漁獲実績に応じて決定。(前年は,2億6,479万円から3億25万円の範囲で漁獲実績に応じて決定され,実績は2億6,479万円。)

ということです。

ここでわかることをおさらいすると

  • 交渉は4月2日~6日、東京で行われた
  • 総量は2050トン(シロサケ、カラフトマスなど計)
  • 協力費は2億6千万円

ということでした。

春のサケ・マスの原価計算

上記の2018年の状況からサケ・マスの原価を計算してます。

2億6千万円÷2050トン=1Kgあたり126円。

この126円がロシアに支払う単価です。

最低でもこの価格がベースとなります。

ここに漁師さんの日当、燃料費、船の代金などが上乗せになります。

セミドレス(腹出し頭付き)7.5kg箱入り商品なら最低でも1箱1,000円以上が原価となります。

カラフトマスは日本に遡上することも

ちなみに最近の研究だと、カラフトマスは、日本生まれもいるようです。

カラフトマスは生まれた故郷より条件の良い他の川へ帰る傾向があります。

水温やその他の条件によって遡上する川を決めるといわれています。

母川国主義はもともとアメリカが言い出した!

母川国主義は、もともとアメリカが言い出したことです。

鮭、鱒は自分の国に帰ってくるのだからその途中に取るならお金を払え、と言い出しました。

この辺り、ルールを作った方が強いという日本外交に危惧を抱いてしまいます。

また、時さけやカラフトマスはソ連が強硬に言い出したことです。

言いがかりのような気もしますが、ルールを作った方が強いんです。

2022年は時さけ、カラフトマスが食べられない?

2022年はこの漁業交渉自体があやぶまれています。

時さけやカラフトマスが食べられないのではないか?といわれています。

追記:2022年4月8日にロシアと交渉の方針を示し、妥結しました。

水産庁のページ参照

いつもなら1週間くらいで交渉は成立します。

しかし今回はどうなるかわかりません。交渉が難航している間に漁期を逃してしまう気がしています。→ロシアとの交渉は妥結し、2022年5月6日出漁しました。

日本はこういう新規の考え方を打ち出す力が弱いですね。

いつも主導権を他国に握られ振り回されっぱなしというのは昔からです。

もうちょっとしっかりしてほしいものです。