イカの塩辛やホイル焼きでおなじみの「イカの肝」。
濃厚でコクがあって、イカ好きにはたまらない部分ですよね。
私も水産の仕事をしていますが、普段は何気なく「イカ肝」「ワタ」「ゴロ」などと呼んでいます。
ところで、このイカの肝、本当に人間でいう「肝臓」なのでしょうか?
実は、イカの肝と呼ばれている部分は、一般に「中腸腺(ちゅうちょうせん)」または「消化腺」と呼ばれる器官です。
今回は、イカの肝の正体と、なぜあんなに濃厚で美味しいのかを解説します。

イカの「肝」の正体は中腸腺
イカをさばくと、胴の中から茶色~黄褐色の大きな内臓が出てきます。
これが一般に、
- イカ肝
- ワタ
- ゴロ
などと呼ばれている部分です。
生物学的には「中腸腺」あるいは「消化腺」と呼ばれます。
魚の「あん肝」や「カワハギの肝」とまったく同じもの、と考えるよりも、イカの消化や栄養の貯蔵・代謝を担う重要な器官と考えたほうが正確です。
「肝」と呼ばれているのは、その働きや見た目が肝臓に似ているためです。
人間でいうと「肝臓+膵臓」に近い?
中腸腺は、単に栄養を蓄えているだけではありません。
消化に関わる物質を分泌し、食べたものから得た栄養を吸収・蓄積・代謝するなど、複数の働きをしています。
そのため、説明するときには**「人間の肝臓と膵臓の機能を合わせたような器官」**と表現されることがあります。
ただし、人間の肝臓と膵臓をそのまま一つにした器官という意味ではありません。
あくまで「働きを理解するためのたとえ」と考えてください。
なぜイカの肝はあんなに濃厚なのか
イカの肝を食べると、身とはまったく違う濃厚な味がします。
これは中腸腺が、消化だけでなく栄養や脂質などを蓄える器官でもあることと関係しています。
身は比較的あっさりしているのに、肝はねっとりしてコクがある。
だから塩辛にすると、イカの身だけでは出せない独特の旨味と濃厚さが加わるわけです。
焼いたイカに肝を絡める「肝焼き」が美味しいのも同じですね。
あん肝やカワハギの肝とは違う
ここは魚好きなら覚えておくと面白いところです。
アンコウの肝(あん肝)=肝臓
カワハギの肝=肝臓
これに対して、
イカの肝・ワタ・ゴロ=中腸腺(消化腺)
です。
普段は全部まとめて「肝」と呼んでいますが、生物学的には同じ器官ではありません。
イカの肝にカドミウムが多いって本当?
ここは知っておきたいポイントです。
イカやタコなどの頭足類では、内臓にカドミウムが比較的高い濃度で含まれる場合があります。
農林水産省も、イカ・タコなどの頭足類やエビ・カニなどの甲殻類の内臓には、カドミウムが比較的高濃度で含まれることがあるとしています。
ただし、「イカの肝は危険だから食べないほうがいい」という話ではありません。
消費者庁も、こうした水産物や塩辛類について、通常の食生活で健康に悪影響を与える可能性は低いとしています。
大切なのは、特定の食品ばかりを毎日大量に食べ続けるのではなく、バランスよく食べることです。
「肝=毒をためる場所」はちょっと違う
「肝臓は毒を処理する臓器だから、肝には毒がたまっているのでは?」
と思う人もいるでしょう。
しかし、肝臓や中腸腺を単純な「毒物のゴミ箱」と考えるのは正確ではありません。
代謝したり、栄養を蓄えたり、不要な物質の処理に関わったりする、いわば体内の化学工場のような器官です。
ただし、カドミウムのように特定の器官へ蓄積しやすい物質があることも事実です。
「肝だから全部危険」でもなければ、「何も蓄積しない」わけでもない、ということですね。
まとめ:イカの「肝」は実は奥が深い
普段何気なく「イカ肝」「ワタ」「ゴロ」と呼んでいる部分。
その正体は、一般に**中腸腺(消化腺)**と呼ばれる器官です。
消化や栄養の吸収・貯蔵・代謝などに関わっているため、人間の肝臓や膵臓に似た働きを持っています。
アンコウやカワハギの「肝」は肝臓。
でも、イカの「肝」は中腸腺。
いつも食べているイカも、体の仕組みを知ってから食べると、ちょっと違って見えてきませんか?
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