「サザエには毒がある?」
「唾液腺を取らないと酔っ払う?」
「サザエの内臓って食べても大丈夫?」
サザエについて調べていると、こんな情報を見かけることがあります。
実は以前、私もこの記事で、
「サザエの唾液腺には毒があり、食べると酔ったようになる」
という趣旨の説明をしていました。
これはお客様であるホテルの方がそうおっしゃっていたので、このような認識でした。
しかし改めて厚生労働省などの資料を確認すると、これは訂正する必要があります。
結論からいうと、
サザエと、ツブ貝など一部の巻貝にある「唾液腺毒(テトラミン)」を混同してはいけません。
唾液腺を取り除かないと中毒を起こすことで知られているのは、主にエゾボラやヒメエゾボラなどの肉食性巻貝です。
サザエについて「唾液腺を取らないとテトラミン中毒になる」と考えるのは正確ではありません。
ただし、
「ではサザエには自然毒の話がまったくないのか?」
というと、実はもう少し複雑です。
今回は水産卸で魚介類を扱う立場から、公的資料を確認しながら整理します。
サザエの唾液腺に毒がある、は本当?
まず一番大事なところから。
厚生労働省は「巻貝の唾液腺毒(テトラミン)」について注意喚起しています。
ただし、そこで有毒種として挙げられているのは、
- ムカシエゾボラ
- ヒメエゾボラ
- エゾボラモドキ
- ヒメエゾボラモドキ
- スルガバイ
- アヤボラ
- テングニシ
などです。
これらの一部は、市場で「ツブ」「ツブ貝」などとして流通します。
サザエは、このテトラミンを持つ代表的な有毒種としては挙げられていません。
つまり、
「巻貝には唾液腺毒がある」
↓
「サザエも巻貝だ」
↓
「サザエの唾液腺にも同じ毒がある」
とは言えないということです。
巻貝だから全部同じではありません。
ツブ貝で問題になる「テトラミン」とは?
ツブ貝として流通する一部の巻貝では、
唾液腺にテトラミンという毒成分
を持っています。
これを食べると、
- 頭痛
- めまい
- 船酔いのような感覚
- 酩酊感
- 足のふらつき
- 吐き気
などが現れることがあります。
「酔ったようになる貝」
という話は、ここから来ています。
しかもテトラミンは熱に比較的強く、
加熱したから大丈夫、とはいきません。
対象となるツブ貝などでは、調理前に唾液腺を取り除くことが重要です。
サザエも「酔う貝」なの?
少なくとも、
ツブ貝と同じテトラミン中毒の話を、そのままサザエに当てはめるのは間違いです。
サザエを食べると酔っ払うから唾液腺を取らなければならない、という説明は正確ではありません。
私自身、以前はこの点を混同していました。
魚介類の世界では、
「昔からそう聞いている」
「同じような貝だから」
という情報がそのまま伝わることがあります。
しかし自然毒に関しては、魚種・貝種によって全く違います。
今回改めて調べてみて、ここはきちんと訂正しておきたいと思いました。
じゃあサザエの内臓は食べられる?
サザエの壺焼きを食べると、
最後に緑色や黒っぽい内臓が出てきます。
これを好きな人も多いですよね。
独特の苦味があります。
一般的に食用として流通しているサザエでは、内臓も食べられています。
ただ、私はサザエを実際にさばいて刺身や煮物にするとき、
内臓を取り除くことがあります。
理由は毒というより、
砂などが入っていてジャリジャリすることがあるから。
以前、漁師さんから直接いただいたサザエを自分で調理したときも、この点を感じました。
サザエの内臓を取るかどうかは、
「毒があるから必ず除去」
という話とは分けて考えた方がいいでしょう。
実はサザエにも「自然毒」の報告はある
ここから少し話が複雑になります。
「サザエにテトラミンの唾液腺毒はないなら、サザエには毒の心配は一切ない」
と断言するのも正確ではありません。
厚生労働省の自然毒資料には、
ピロフェオホルバイドa
という物質について記載があります。
これは主に春先のアワビ類の中腸腺で問題になる物質です。
大量に摂取すると、
光過敏症
を引き起こすことがあります。
日光などに当たることで、顔や手などに発赤、腫れ、痛みなどが起こるものです。
そして厚生労働省の詳細資料では、
サザエについても「弱いながら有毒」とする文献
が紹介されています。
ただし「サザエは危険」という意味ではない
ここは誤解しないでください。
厚生労働省によると、このタイプの中毒そのものが、
極めてまれ
です。
また、サザエについての記述も、ツブ貝のテトラミンのように一般消費者へ「この部分を必ず除去してください」と注意喚起されているものとは性質が違います。
ですから、
「サザエには毒があるから内臓は食べてはいけない」
と単純化するのも適切ではありません。
整理すると、
ツブ貝など → テトラミンによる唾液腺毒に注意
サザエ → ツブ貝のテトラミンとは別。自然毒について別系統の報告はある
ということです。
サザエとツブ貝は同じ「巻貝」でも違う
サザエもツブ貝も、見た目だけなら、
「殻を持った巻貝」
です。
しかし、食品衛生上は同じように扱えません。
特に、
「巻貝=唾液腺を取らなければ危険」
と覚えてしまうと間違いやすいです。
たとえば北海道などで「ツブ」と呼ばれて食べられているヒメエゾボラなどは、唾液腺にテトラミンを持つため除去が必要です。
一方、一般的なサザエについて、同じ理由から唾液腺を除去する必要があるとはされていません。
魚介類の自然毒では、
「何の貝なのか」
を確認することが非常に重要です。
ツブ貝は加熱すれば毒がなくなる?
これも注意してください。
テトラミンは、
加熱しても簡単にはなくなりません。
「生は危ないけど、煮れば大丈夫」
というタイプの毒ではありません。
対象となるエゾボラ類などを調理するときは、
唾液腺そのものを取り除く
必要があります。
知らない巻貝を自分で採って食べる場合などは、見た目だけでサザエやツブ貝の仲間と判断しない方が安全です。
サザエを食べるときに気をつけたいこと
普通に食品として流通しているサザエを食べる場合、
「唾液腺の毒を抜かなければ」
と過度に心配する必要はありません。
それよりも、
- 鮮度の良いものを選ぶ
- 生食するなら生食可能な状態のものを使う
- 自分で採った種類不明の巻貝を安易に食べない
- 体調に異変が出たら医療機関へ相談する
といった基本的な注意の方が大切です。
特に、
種類が分からない巻貝を「たぶんサザエみたいなものだろう」と食べるのはやめましょう。
同じ巻貝でも、種類によって持っている自然毒が違うからです。
サザエに毒はある?まとめ
最後に整理します。
「サザエの唾液腺にはテトラミンがあり、食べると酔っ払う」
という説明は正確ではありません。
テトラミンによる唾液腺毒で注意が必要なのは、
ヒメエゾボラやエゾボラモドキなど、一部の肉食性巻貝。
これらは「ツブ」「ツブ貝」などの名前で流通することがあります。
一方、サザエについては、
ツブ貝と同じ理由で唾液腺を取り除かなければならないとはされていません。
ただし、自然毒の話が完全にゼロというわけではなく、厚生労働省の資料にはピロフェオホルバイドaについて、サザエも弱いながら有毒とする文献が紹介されています。
大切なのは、
「サザエ」と「ツブ貝など一部の有毒巻貝」を一緒にしないこと。
私自身も以前この記事で混同していましたが、改めて公的資料を確認すると、ここは明確に分けて説明すべきでした。
魚介類について調べると、昔から言われてきた話と、現在確認できる情報が違っていることがあります。
そういうときこそ、
「本当のところはどうなんだろう?」
と調べ直すのも、魚を扱う仕事の面白さだと思います。
※実際にサザエをさばいて刺身・煮物にした体験については、別記事「漁師さん直送のサザエ!ダッチオーブンで下茹でして刺身と煮物を作ってみた」も参考にしてください。
コメント Comments
コメント一覧
コメントはありません。
トラックバックURL
https://fish-neta.com/turban-shell/trackback/