先日、うちの若いやつに在庫管理を任せてみました。
すると彼は売れてる商品も売れてない商品も全て一律に同じ数量を発注するというのです。
ここまで理論も何もないのか、こいつは。
売れている商品と売れない商品の発注数が同じって。
それって理屈に合わないですよね。
それはあなたの理屈でしょ、と。
商品の出荷状況にもとづいた理屈じゃないわけです。
あなたが管理しやすい、あなたが理解できるだけの、理屈でしょと思うのです。
在庫管理は大変!
そもそも、在庫管理って大変なんです。
足りなくなると困るけども余っても困る、そのギリギリの綱を渡っていくのが在庫管理なんです。
だから、売れてる商品も売れてない商品も同じ数量を発注する、というのは売れない商品は不良在庫になる可能性が高まり、売れている商品は欠品する、ということになります。
受注予測にもとづいて適切な数発注していかないといけないわけです。
商品を販売していて、欠品は痛いですね。
せっかくの売り上げの機会をふいにしてしまいます。
それで済めばいいですが、流通業だと、それ以外の事態も起こりえます。
つまり、そのアイテムが欠けることによって、顧客の製品が完成しない、という事態です。
こうすると、ヘタをすると取引先から保証を求められたりします。
昔スーパーマーケットに「売価保障」をさせられたことがありました。
納品原価を補填ではなくて、取引先が売れるはずだった金額を保証させられたのです。
でもこれってちょっと理屈に合いません。
確かに取引先には迷惑をかけました。
しかし得るべき「利益」の保証ではなく、売上金の保証とは…
例えば私が100円で卸した商品を取引先が150円で販売する予定だったとします。
そうすると取引先が得たであろう利益は150-100=50円ですね。
だからロスがなかったと仮定しても50円を補填すればよいはずです。
ところがそこの取引先は「150円の保証」をもとめてきました。
これっておかしいですよね。
だって取引先は今回の欠品で2つの利益を得ていますから。
- すべて売り切った、廃棄がなかったという仮定
- 原価0円で仕入れて150円で販売した、丸儲けの利益
以上、ありえない結果を得たわけです。
私の会社は立場的に弱いので、従いました。
在庫管理の方法
それでは在庫管理はどうやってやっていけばいいでしょうか。
足りなくても困る、余っても困る、このギリギリの綱を渡っていくのが在庫管理だ、と書きましたね。
じゃあ、足りなくなるとはどのような状況でしょうか。
商品が足りない=欠品!
商品が足りなくなるとは、欠品するということですね。
欠品すると大変なことはコラムで書きました。
では欠品とは何でしょうか。
在庫よりも注文が多い状況ですね。
ということは在庫が少ないのか、それとも注文が多いのか、ということですね。
注文が多いのは予想できるのか?
では注文が多くなるというのは完全に予想できるでしょうか。
結論から言うと、完全には無理です。
もちろん取引先との打ち合わせで特売の打ち合わせをして、事前に数量を提示してもらうことはできます。
そしてそれは営業や販売窓口の仕事になります。
では通常の注文で予想を上回って注文が来ることはないでしょうか。
もちろんそんなこともよくあります。
よくPOS(ポイント・オブ・セールス。販売時点情報管理。)で管理すればわかる、といいますが、そんなに単純でもないです。
もしかしたら、一部の大口の需要者だけが買っているのかもしれませんね。
チェーン店で数十店舗あるお店のデータなら正確なデータが出るかもしれません。
天気とか温度とか、テレビの影響とか、いろいろな変数があります。
そんなお客さんの心理は完全に予測は無理です。
ある程度はわかるのですけどね。
じゃあどうするのか?というと、やっぱり最近の出荷状況というのは大切な情報です。
それに合わせて、在庫量を変動させていくしかありません。
でももしかしたら、その日の天気、湿度、祝日などを数字化して、とある商品との関連を調べたら、将来的には結構な制度の需要予測ができるかもしれません。
いや、今すぐビッグデータ解析などでできるかもしれませんね。
注文を完全に予測できない場合:安全在庫を持つ
注文を完全に予測できないのであれば、多少ぶれても欠品しないために、安全在庫を持つ必要があります。
これはひと月に何回発注が来るのか、
注文にはひと月にまとめて注文がくるタイプと、毎日ちょこちょこと注文が来るタイプがあります。
これはお客さんの在庫に関する考え方、発注にかけられる手間、などによって変わってきます。
- 少発注・高金額タイプ:発注頻度が少ないが、ひと月の納品金額が大きい商品、または顧客のタイプ。顧客のほうで在庫を持ちながら、減ったら発注が来る。そのため、自社では顧客の在庫が見えないため、在庫管理がしづらい。メリットとしては手間がかからない、効率的な商売ができるというもの。
- 多発注・少金額タイプ:発注頻度は多いが、トータルすると納品金額はそれほど多くないタイプの商品、または顧客のタイプ。問屋、流通業者を倉庫代わりに使っている。そのため自社からの納品が見えやすく、在庫管理がやりやすい。デメリットとしては手間がかかること。
上記のような発注のタイプが見受けられます。
このうち、「少発注・高金額タイプ」の商品に気を付ければよい、と考えられます。
少発注・高金額タイプを見分ける
それでは気を付けるべき、少発注・高金額タイプはどのようにして見分ければよいでしょうか。
例えば以下のような指数を考えてみました。
ひと月の納品金額÷ひと月の納品回数=納品頻度指数
(納品指数というのは筆者の造語です。)
この納品頻度指数の数字が高いほど欠品しやすい、と考えられます。
納品頻度は多くないのに金額が大きい=お客さんが在庫しながら使用するタイプの商品なので、お客さんの在庫までは読めないということです。
先ほど述べた、「少発注・高金額タイプ」です。
エクセルのcount関数などを使って、ひと月の発注回数を調べます。
そして納品頻度指数を計算し、高いものを優先的に管理するようにします。
また、指数の高いものは、納品回数が少なく、金額の多い商品です。
つまり「おいしい商品」と言えます。
指数を使ってこのような商品をあぶりだすこともできます。
納品までのリードタイムから最低在庫量を割り出す!
さて、欠品しない在庫とはどのような数でしょうか。
発注して入荷までの数量があれば欠品しませんね。
つまりリードタイム分の在庫があればいいわけです。
リードタイムが7日かかる商品なら、前月の出荷数量×7日/30日の数量に達したら発注をかけます。
7日の数字だけだと、前出の納品頻度が少ないものは欠品するかもしれませんね。
そのために安全在庫を持つことが必要になります。
この安全在庫は「自分での感覚で調整する」しかありません。
対象となる業界や会社の状況によって違います。
リードタイム7日の商品ならば、最低14日分くらいの在庫を持っていればまずは安全だと思います。
発注数量はどうするのか?
最低在庫は割り出せましたか?
最低在庫を割り出したら、次は発注すべき数量をどうするのか?ということです。
私の会社ではひと月で在庫を1回転以上させたいと思っています。
そうすることでキャッシュフローを潤沢にしたいからです。
(キャッシュフロー=ここでは手持ちの現金のこと)
なので、今の在庫量と合わせて約15日ほどの在庫になるように発注します。
こうすることでひと月にちょうど売り切れる在庫量を目指しています。