魚の「なぜ?」を、現場から。

刺身サーモンは何の魚?トラウトとアトランティックの違いを水産卸が解説

刺身サーモンは何の魚?トラウトとアトランティックの違いを水産卸が解説

スーパーに行くと、当たり前のように並んでいる「刺身サーモン」。

でも、このサーモンが何の魚なのか知っていますか?

実は「サーモン」という名前だけでは、魚種までは分かりません。

スーパーの刺身や寿司に使われる代表的なものには、

トラウトサーモン

アトランティックサーモン

があります。

さらに近年では、国産養殖の銀鮭も刺身用として見かけるようになりました。

私は水産卸の仕事で、スーパー向けの刺身用サーモンを扱っています。

私の取引先では現在、

トラウトが圧倒的に多く、感覚的には8割ほど。

では、なぜアトランティックではなくトラウトが多いのでしょうか?

単純に「トラウトの方がおいしいから」ではありません。

実際の売場では、

色・価格・脂・食感・加工規格・売場での見栄え

などを含めて商品が選ばれています。

この記事では、一般的な魚種の違いだけではなく、実際に刺身用サーモンを販売している水産卸の現場から解説します。

刺身サーモンの正体は一種類ではない

まず、「サーモン」という名前の魚が一種類だけいるわけではありません。

日本のスーパーで刺身や寿司として販売されているサーモンには、いくつかの魚種があります。

代表的なのが、

トラウトサーモン

アトランティックサーモン

です。

さらに最近では、

養殖銀鮭

も生食用として流通しています。

そのため、

「サーモンの刺身を買った」

だけでは、実際に何の魚を食べたのか分からないことがあります。

気になる人はスーパーの食品表示を確認してみてください。

トラウトサーモンとは?

トラウトサーモンとして流通しているものは、一般に海面養殖されたニジマスです。

「トラウト」というと川魚のイメージがあるかもしれませんが、大型に育てられた養殖トラウトは、日本では刺身や寿司ネタとして大量に流通しています。

私が水産卸で扱う刺身用サーモンも、

圧倒的にトラウトが多いです。

感覚的には、

トラウト8:アトランティック2

くらいです。

もちろん時期、相場、取引先によって変わります。

全国の刺身サーモンの8割がトラウトという意味ではありません。

あくまで、私が実際に扱っているスーパー向け商材での感覚です。

なぜスーパーではトラウトが選ばれる?

ここが水産卸で仕事をしていて面白いところです。

トラウトが多い理由は、

「トラウトの方がおいしいから」だけではありません。

むしろバイヤーが商品を選ぶときに重要になるのが、

色目です。

トラウトは赤っぽくて売場で映える

トラウトは、比較的赤っぽく鮮やかな身色の商品が多くあります。

スーパーの刺身売場に並べたとき、

この赤い色がきれいなんです。

一方、アトランティックサーモンは脂が多く、商品によってはトラウトより身色が薄く見えることがあります。

もちろん、

赤いサーモンほどおいしい、という意味ではありません。

しかしスーパーでは味だけでなく、

「パックにしたとき、おいしそうに見えるか」

も重要です。

実際、私の取引先では、この色目を理由にトラウトを選ぶバイヤーがいます。

これは水産卸でサーモンを販売していると実感するところです。

トラウトの方が少し安いことも多い

もう一つは価格です。

相場によって変動しますが、私の扱う商品では、

トラウトの方がアトランティックより少し安い

ことが多くあります。

スーパーにとって原価は当然重要です。

色がいい。

味もいい。

そして価格も比較的使いやすい。

このバランスが、トラウトの強さだと感じています。

トラウトとアトランティック、味はどう違う?

これは完全に、

好みです。

私自身はどちらも好きです。

ただ、実際に食べると方向性はかなり違います。

トラウトは旨味と食感

私がトラウトを食べて感じるのは、

旨味と食感。

適度な脂がありながら、身そのものの旨味を感じます。

アトランティックと比較すると身の食感も感じやすく、

「サーモンの身を食べている」

という感覚があります。

アトランティックは脂がおいしい

一方、アトランティックサーモンの魅力は、

脂。

脂ののったアトランは本当においしいです。

口当たりも柔らかく、脂の甘味を感じます。

実際、アトランを好んで選ぶバイヤーもいます。

逆に、

「トラウトの方がおいしい」

というバイヤーもいます。

この辺は完全に好みですね。

目隠ししたらアトランを選ぶ人が多いかも?

これはデータではなく、長年魚を扱って食べてきた私個人の予想です。

もし、

トラウトとアトランティックを同じ価格にして、魚種を知らせず食べ比べてもらったらどうなるか?

一般の人にはアトランティックを選ぶ人も多いのではないかと思っています。

理由は、

脂の分かりやすいおいしさ。

脂ののった魚を好む人は多いですからね。

ただしスーパーの商品は、

味だけで決まるわけではありません。

色目、価格、歩留まり、加工のしやすさ、売場での見え方。

そうした条件を総合すると、私の取引ではトラウトが強いということです。

刺身用サーモンは「生」が一番?

鮮度の良い生サーモンがあれば、もちろん魅力的です。

しかし水産流通では、

生のまま産地からスーパーまで運ぶのは簡単ではありません。

加工、輸送、販売まで時間がかかります。

そこで刺身用サーモンでは冷凍品も重要になります。

私が食べておいしいと感じるのが、

ワンフローズン

の商品です。

ワンフローズンとは?

ワンフローズンとは、

基本的に一度凍結した商品

を指して水産流通で使われる言葉です。

良い状態の原料を凍結し、使用時に解凍する。

こうしたワンフローズンのサーモンは、状態が良ければかなりおいしいです。

「生=必ずおいしい」
「冷凍=まずい」

というほど単純ではありません。

産地から売場までの時間を考えれば、適切に凍結・保管・解凍されたサーモンには大きなメリットがあります。

昔は「背側ロイン」をよく使っていた

私の仕事では、以前、

トラウトの背側ロイン

をよく扱っていました。

ロインとは、フィーレからさらに加工して、刺身などに使いやすい形にしたものです。

しかも背側だけ。

スーパー側では加工しやすく、刺身にしやすい便利な商品です。

ところが最近、私の取引先では選ばれる規格が変わってきました。

最近はトリムE、さらにトリムCへ

近年は、

トリムE

の注文が増えました。

さらに直近では、

トリムC

の注文も来るようになっています。

トリムとは、サーモンのフィーレをどこまで整形しているかを表す加工規格です。

細かな仕様はメーカーや商品によって確認が必要ですが、基本的には加工度が上がれば、その分使う側の手間を減らせます。

ただし当然、

加工してもらえばコストがかかります。

そこで、

「店舗や加工場で多少手間がかかっても、原料価格を抑えたい」

となれば、より加工度の低い規格も選択肢になります。

私の取引で、

背側ロイン → トリムE → トリムC

という動きが見られるのも、最近の原料価格を意識した商品選びの一例だと感じています。

最近は「刺身用の銀鮭」も増えている

そして、もう一つ注目したいのが、

銀鮭です。

銀鮭というと、

「焼いて食べる鮭」

というイメージを持つ人も多いと思います。

しかし現在では国内でも養殖が行われ、生食向けの商品が流通しています。

三陸では銀鮭養殖が盛んで、鮮度保持処理を行った「みやぎサーモン」のように、刺身で食べることを前提としたブランドもあります。

私の周囲でも、

銀鮭を刺身用として見る機会は以前より増えてきました。

銀鮭の刺身はおいしい?

ここは私個人の好みを正直に言うと、

私は銀鮭を刺身ではあまり選びません。

理由は、

水っぽさを感じることがあることと、身割れしやすいこと。

刺身として食べるなら、私はトラウトやアトランティックの方が好きです。

ただし、これは、

「銀鮭は刺身に向かない」という意味ではありません。

養殖方法や鮮度、締め方、商品によって品質は当然違います。

実際、生食向けに品質を高めた養殖銀鮭も流通しています。

そして銀鮭には、

価格が比較的使いやすい

というメリットもあります。

スーパーにとってこれは大きなポイントです。

トラウトやアトランティックの価格が上がれば、

国産養殖銀鮭を刺身商材として使う

という選択肢も出てきます。

今後、刺身サーモンの売場で存在感が増える魚の一つだと思います。

結局、刺身サーモンはどれがおすすめ?

これは好みで選んでいいと思います。

旨味と食感を楽しみたいならトラウト。

脂のりを楽しみたいならアトランティック。

国産養殖や価格にも注目するなら銀鮭。

という見方をすると分かりやすいでしょう。

ただし魚種だけで味が決まるわけではありません。

養殖方法、脂のり、鮮度、冷凍状態、解凍方法などでも味は大きく変わります。

スーパーでサーモンを買うときは、

「サーモンだから全部同じ」

と思わず、ぜひ表示を見てみてください。

刺身サーモンは何の魚?まとめ

スーパーで売られている刺身サーモンは一種類ではありません。

代表的なのが、

トラウトサーモンとアトランティックサーモン。

さらに近年は、国産養殖銀鮭の生食商品もあります。

私が水産卸で実際に扱う刺身用サーモンでは、

トラウトがおよそ8割。

トラウトが選ばれる背景には、

赤っぽくきれいな色目

旨味と食感

比較的使いやすい価格

があります。

一方、アトランティックの魅力は、

脂のりの良さ。

私自身はどちらも好きです。

そして最近は、商品規格にも変化を感じます。

以前は背側ロインをよく使いましたが、

ロイン → トリムE → トリムC

と、私の取引先では価格を意識した原料選びも見られるようになりました。

スーパーに並ぶ一パックの刺身サーモン。

実はその裏側では、

味だけではなく、色、価格、加工コスト、作業性、売場での見栄え

まで考えて魚が選ばれています。

次にサーモンを買うときは、ぜひラベルを確認してみてください。

いつものサーモン売場が、ちょっと違って見えると思います。

※サーモン寿司が日本で定着した歴史については、別記事「サーモン寿司はいつから?昔はなかった理由とノルウェーが広めた歴史」で詳しく紹介しています。

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