スーパーの鍋売場などで見かける冷凍の「切りワタリガニ」。
以前は中国産をよく見かけましたが、近年、水産業界で評価されているのがバーレーン産のワタリガニです。
ただ、このバーレーン産ワタリガニ。
実は昔は、あまり評判がよくありませんでした。
理由の一つが、見た目が青いことです。
私は水産卸の仕事で長年ワタリガニを扱ってきましたが、以前は、
「青いカニはちょっと……」
と敬遠されることがあり、中国産のワタリガニのほうを好むお客さんも少なくありませんでした。
ところが最近は評価が逆転しています。
「バーレーン産のほうが臭みが少なくていい」
と言われることが増えてきました。
そして2026年、このバーレーン産ワタリガニが別の意味でも注目されています。
中東情勢とホルムズ海峡の物流混乱によって入荷が非常に不安定になっているからです。
バーレーン産ワタリガニはなぜ青い?
バーレーン産として日本で流通している切りワタリガニには、原料としてタイワンガザミと表示されている商品があります。
タイワンガザミは、特にオスの青色が鮮やかなワタリガニの仲間です。
そのため冷凍の切りガニでも、爪や脚などにかなり青い色が残っています。
初めて見る人なら、
「本当にこのカニ食べられるの?」
と思っても不思議ではありません。
しかし、これは傷んで青くなっているわけではありません。
もともとのカニの色です。
現在の業務用商品でも、バーレーン産ワタリガニは「青色の爪」を特徴として販売されています。
中国産ワタリガニとは何が違う?
日本や中国沿岸で一般的なガザミの学名は Portunus trituberculatus です。
日本ではこのガザミを「ワタリガニ」と呼ぶことが多いため、
「ワタリガニ=一種類のカニ」
と思われがちですが、実際にはワタリガニと呼ばれるカニにはいくつかの種類があります。
そのため、
中国産ワタリガニとバーレーン産ワタリガニは、単純に産地だけが違うわけではありません。
流通している商品によって原料となる種類も違います。
昔は中国産、今はバーレーン産?
ここからは、水産卸として実際に商品を扱ってきた私の経験です。
昔はバーレーン産の評価は今ほど高くありませんでした。
とにかく見た目が青い。
日本の消費者は見慣れていないので、売場に並べたときの違和感がありました。
そのため、
「中国産のほうがいい」
と言われることもありました。
ところが近年は、むしろ逆です。
取引先などから、
「バーレーン産のほうが臭みがなくていい」
という声を聞くようになりました。
見た目よりも、実際に鍋や料理に使ったときの品質が評価されるようになってきたのだと思います。
これは長年商品を見ていると面白いところです。
昔は「青いから嫌だ」と言われたカニが、今では産地を指定して欲しがられる商品になっているのです。
ワタリガニは「身を食べる」だけのカニではない
ワタリガニの魅力は、身の量だけで考えると分かりにくいです。
ズワイガニのように脚肉をたっぷり食べるというより、
殻や身から出る旨味を料理全体で楽しむカニ
だと私は思っています。
特におすすめなのが、
- 海鮮鍋
- 味噌汁
- カニ汁
- パスタ
- 中華料理
- 炒め物
など。
実際、現在販売されているバーレーン産の業務用切りワタリガニも、鍋、カニ汁、パスタ、煮込み料理などの用途が提案されています。
鍋に入れると、カニそのものを食べるだけでなくスープに旨味が出ます。
だからワタリガニは鍋商材として非常に使いやすいのです。
ところが2026年、バーレーン産が入ってこない
2026年は状況が大きく変わりました。
中東情勢の悪化とホルムズ海峡をめぐる物流混乱です。
バーレーンはペルシャ湾内にあります。
日本へ商品を輸送するには、この地域の海上物流の影響を大きく受けます。
2026年9月になってもホルムズ海峡では船舶の通航が通常より少ない状況が確認されており、物流は完全には正常化していません。
そして私のいる水産卸の現場でも、その影響を感じています。
バーレーン産ワタリガニの入荷量がかなり少ないのです。
毎年、秋から冬に向けてワタリガニは鍋商材として提案する商品ですが、今年は数量確保が難しくなっています。
世界情勢のニュースというと、石油やLNGの話が中心になります。
しかし実際には、
中東の戦争
↓
ホルムズ海峡の物流混乱
↓
バーレーンから水産物を運びにくくなる
↓
日本の冷凍ワタリガニが不足
↓
スーパーの鍋売場の商品にも影響する
ということが起きます。
水産物は世界中から輸入されているので、国際情勢が意外な商品にまで影響するのです。
昔は嫌われた青いカニが、なくなると困る商品になった
水産業界で長く商品を見ていると、商品の評価が変わることがあります。
バーレーン産ワタリガニは、その典型だと思います。
昔は、
「青いから売りづらい」
と言われました。
中国産のほうが好まれた時代もありました。
ところが現在は、
「バーレーン産のほうが臭みが少なくていい」
という評価を聞くようになりました。
そして2026年。
そのバーレーン産がなかなか入ってこなくなり、今度は
「バーレーン産が欲しいのに物がない」
という状況になっています。
昔は青い色が弱点だったカニが、今では鍋商材として頼りにされる存在になった。
水産物の評価というのは、本当に変わるものです。
そして今年の鍋シーズンは、いつも当たり前に売っていたワタリガニについて、改めて産地や調達先を考える年になりそうです。
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