食品業界で仕事をしていると、ときどき「留型(とめがた)」という言葉を聞きます。
「留型商品って何?」
「PBとは違うの?」
「普通の商品と何が違う?」
食品業界以外の人には、ほとんど馴染みのない言葉ですよね。
簡単にいうと、留型商品とは、メーカーが特定の取引先向けに容量・配合・仕様・パッケージなどを変更して作る専用商品のことです。
例えば、普段メーカーが販売している商品を、
「このスーパー向けに内容量を少し増やす」
「このチェーン向けに配合を変える」
「この得意先だけの規格にする」
といった形で商品化することがあります。
これが「留型商品」と呼ばれるものです。
食品卸としてスーパーなどに商品を提案していると、この「留型」という考え方は意外とよく出てきます。
今回は、留型商品の意味やPB・NBとの違い、なぜ留型商品を作るのかを、食品流通の現場目線で解説します。
留型商品とは?
留型商品(とめがたしょうひん・留め型商品)とは、特定の取引先向けに仕様を変更して作られる専用商品です。

実際、内閣府の食品表示部会資料でも、留型商品について「販売先(取引先)の注文に応じた容量や配合等で販売する商品」と説明されています。
また、流通業界の商品情報では、NB(ナショナルブランド)、PB(プライベートブランド)とは別に「特定の取引先専用」の商品として分類されることがあります。
ポイントは、
「誰にでも同じ規格で販売する商品ではなく、特定の取引先向けに作られている」
ということです。
留型商品の具体例
例えばメーカーが、
通常品:200g・398円
という商品を販売しているとします。
あるスーパーから、
「うちのお客さんには少し量が多い。150gくらいにして298円で販売できないか?」
という要望が出たとします。
そこでメーカーが、そのスーパー専用に、
留型商品:150g・298円
という規格を作ります。
中身の基本的な商品は同じでも、内容量を変更することで、そのスーパーだけの商品になります。
逆に、
「うちでは大容量が売れるので300gにしてほしい」
「味付けを少し変えてほしい」
「原料の配合を変えて、この価格帯にしてほしい」
といった留型も考えられます。
食品の場合は、容量だけでなく、
- 配合
- 原材料
- サイズ
- 入数
- パッケージ
- 価格帯
- 味付け
などを取引先に合わせて変更することがあります。
留型商品とPBの違いは?
留型商品とよく似ているのがPB(プライベートブランド)です。
例えばスーパーやコンビニが自社ブランドとして企画し、メーカーに製造を委託して販売する商品がPBです。
一方、留型商品はメーカーの商品・ブランドをベースにしながら、特定の小売店や取引先向けに仕様を変更するケースが多くあります。
イメージとしては、
NB
→ メーカーが通常規格として広く販売する商品
留型
→ 特定の取引先向けに規格などを変更した専用商品
PB
→ 小売店などの独自ブランドとして販売する商品
と考えると分かりやすいでしょう。
ただし実際の商品開発では、PBと留型の境界がはっきりしないケースもあります。
企業や業界によって「留型」の使い方が多少異なることもあるので、「メーカー名が書いてあるかどうか」だけで判断するのではなく、特定の取引先向けの商品なのかを見る方が本質に近いです。
留型商品とNBの違いは?
NBとは「ナショナルブランド」の略です。
メーカーが自社ブランドで広く販売する一般的な商品です。
例えば、同じメーカーの商品を全国のスーパーやドラッグストアなどで購入できる場合、その基本商品はNBと考えると分かりやすいでしょう。
留型商品は、それを特定の取引先向けに変更した商品です。
例えば見た目はNBとよく似ていても、
「内容量が違う」
「配合が違う」
「そのチェーンでしか売っていない」
といった商品があります。
こうした商品が留型である場合があります。
同じ商品に見えるのに容量が違うのはなぜ?
スーパーを何軒か回っていると、
「あれ?同じメーカーの商品なのに、こっちの店は容量が違う」
ということがあります。
必ずしもすべてが留型とは限りませんが、特定チェーン向けの専用規格である可能性があります。
これは小売店側が、
「競合店と同じ商品を同じ規格で売りたくない」
という事情を持っているからです。
まったく同じJAN・同じ容量の商品なら、消費者から簡単に価格比較されてしまいます。
しかし容量や規格が違えば、単純な価格比較がしにくくなります。
また、小売店側も自社の客層に合わせた商品を販売できます。
なぜスーパーは留型商品を作るの?
小売店側のメリットの一つが差別化です。
どこのスーパーでも同じ商品を販売していれば、どうしても価格競争になりやすくなります。
一方、
「この店にしかない容量」
「この店専用の味」
「このチェーンだけの規格」
なら、他店との差別化になります。
また、
「298円で販売したい」
「500円以内の商品を作りたい」
「ファミリー向けに大容量にしたい」
といった売場側の要望を商品に反映できるのもメリットです。
つまり留型商品は、
メーカーの商品力を利用しながら、小売店の売場に合わせて商品をカスタマイズする方法
ともいえます。
メーカーが留型商品を作るメリット
留型は小売店だけにメリットがあるわけではありません。
メーカー側にも、
- 大口取引につながる
- 販売数量を確保できる可能性がある
- 自社ブランドを活用できる
- 小売店との関係を強化できる
- 新しい規格を試せる
といったメリットがあります。
特に一定数量の販売が見込めるチェーン向けの商品なら、専用規格を作る意味があります。
実際、メーカーが特定小売業向けの商品を作りながら、メーカーのブランドを活用する事例もあります。
留型商品はなぜ安いことがある?
留型商品は、通常のNB商品より安く販売されることがあります。
ただし、留型=安い商品という意味ではありません。
安くできる理由としては、
- 内容量を変更する
- 原材料や配合を変更する
- 包装を簡素化する
- 大量生産する
- 販売数量をある程度確保する
- 取引先が求める価格に合わせて仕様を設計する
などが考えられます。
逆に、原料や製法にこだわった高付加価値の留型商品を作ることもできます。
つまり留型とは「安くする仕組み」ではなく、
取引先に合わせて商品仕様を変える仕組み
と考えた方が正確です。
留型商品はPBより作りやすい?
これは商品や契約条件によります。
留型商品は既存のNBをベースに、容量や配合などを変更して作れるケースがあるため、ゼロからPBを立ち上げるより開発しやすいことがあります。
一方で、専用の包材を作ったり、配合を変更したりすれば、メーカー側にも製造・在庫管理の負担が発生します。
また、特定の取引先向け商品なので、販売が終了した場合に専用包材や原料が残るリスクもあります。
したがって、
「留型ならメーカーにリスクがない」
というわけではありません。
最低ロット、販売数量、包材在庫、終売時の扱いなどを事前に決めておくことが重要です。
食品卸から見た留型商品の面白さ
食品卸として営業をしていると、単にメーカーの商品を右から左へ販売するだけでは、なかなか他社との差別化ができません。
そこで留型という考え方が活きてきます。
例えば得意先から、
「この商品、もう少し小さくできない?」
「この価格で売れる規格が欲しい」
「競合スーパーにはない商品が欲しい」
と言われたとします。
その要望をメーカーへ伝え、
得意先の売場に合う規格をメーカーと一緒に作る。
これは卸売業の提案力が発揮される仕事です。
メーカー、小売店、卸の三者で、
「この売場なら何gが売れるのか」
「いくらなら消費者が買いやすいのか」
「どんな規格なら競合と差別化できるのか」
を考えて商品を作る。
留型商品は、そうした食品流通ならではの商品開発方法の一つです。
留型商品とは?まとめ
留型商品とは、特定の取引先向けに容量・配合・仕様などを変更して作る専用商品です。
ポイントをまとめると、
- 「留型」「留め型」と呼ばれる
- 特定の取引先向けの商品
- 容量や配合などを変更することがある
- NBをベースに開発されるケースがある
- PBとは販売方法やブランドの位置付けが異なることがある
- 小売店は競合店との差別化ができる
- メーカーは販売数量や取引拡大につながる可能性がある
- 留型=安い商品、という意味ではない
食品業界で「留型」という言葉を聞いたら、
「特定の得意先向けに作った専用規格の商品」
と考えると、まず分かりやすいでしょう。
スーパーで同じメーカーの商品なのに容量や仕様が微妙に違うものを見つけたら、それは留型商品かもしれません。
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