先日お客さんの所に訪問して驚くことを聞きました。
スーパーに農政局のお役人がきて、計量が正確に行われているか、チェックしていった、ということ。
しらす干しなどを抜き取り検査をするそうです。
計量法で誤差は認められている!
そこで言われたのは、例えば50gと書いたらぴったり50 gでないと駄目だそうです。
少なければもちろんお客さんを騙すことになってしまいます。
しかし多ければいいのでは?と思いますがそれも駄目だと言われたそうです。
そんなに厳しいかな?と思います。
実際魚でも肉でも、パッキングした後にドリップ(水分)が出ますね。
測るときはきちっと50gだったとしても、ドリップが出た後に計ったら49gだった、ということもあり得ます。
それは仕方ないんじゃないか?というのが私の感想です。
気になったので調べてみると、以下のようなことがわかりました。
第十二条 政令で定める商品(以下「特定商品」という。)の販売の事業を行う者は、特定商品をその特定物象量(特定商品ごとに政令で定める物象の状態の量をいう。以下同じ。)を法定計量単位により示して販売するときは、政令で定める誤差(以下「量目公差」という。)を超えないように、その特定物象量の計量をしなければならない。
経済産業省「電子政府の総合窓口」より引用
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=404AC0000000051
政令で定める誤差のことを「量目公差」というそうですね。
つまり、政令で誤差を認めているのですね。
えー?!誤差を認めているではないですか…
農政局の話はなんだったのでしょうか?!
計量法の誤差=量目公差とは
では量目公差とはどのようなものでしょうか。
Q:
- 特定商品について、表示よりも実際の内容量が多い場合の量目公差はあるのか。
- 特定商品について量目公差が定められている上限(特定商品の販売に係る計量に関する政令別表1第4欄)より表示量が多い場合、量目公差の定めはあるのか。
- 特定商品以外の商品について、量目公差の定めはあるのか。
A:計量をする場合、商品の特性等から計量の結果が常に真実の量になることは困難であり誤差が生じてしまうこと、また、計量法では消費者利益の確保を主たる目的としていることから、特定商品について、表示量が内容量を超えている場合(不足量)の量目公差(許容誤差の範囲)が定められている(「特定商品の販売に係る計量に関する政令」第3条。詳しくは、計量法における商品量目制度の概要参照。)。
- 従って、内容量が表示量を超えている場合(過量)にかかる量目公差は規定されていない。
ただし、計量法第10条において、法定計量単位による取引又は証明における計量をする者は、正確に計量をするよう努めなければならないとされている。このため、著しい過量については、同条に基づき指導・勧告等の対象となり得るので、正確な計量に努めること。なお、内容量が表示量を超えている場合の誤差については下記(i)を目安としている。- 次に、量目公差を適用する特定商品の量には上限が定められているが、表示量が上限を超えた場合の量目公差は規定されていない。
ただし、上限を超えた場合の特定商品についても、計量法第10条の規定により、法定計量単位により取引又は証明における計量をする場合は、正確な計量が求められている。著しく不正確な計量については、同条に基づき指導・勧告の対象となり得るので、正確な計量に努めること。
経済産業省「量目公差に関するよくある質問と答え」より引用
https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/syoko/sangyo/keiryo/ryoumoku.data/bunrui-ryomoku.pdf
魚は「特定商品」のため、表示よりも実際の量が少ないとダメ、ということですね。
当たり前ですね。
では過量(多い)の場合はどうでしょうか。
過量は「量目公差は規定されていない」となっています。
つまり「誤差は設定されていない」ということですね。
誤差は設定されていない?よくわからない表現です。
ただ、文章を読む限りでは、「多少多い分には問題がない。でもやりすぎると指導・勧告するよ」という風に解釈できます。
(i)特定商品及び特定商品以外の商品について、内容量が表示量を超えている場合
(過量)にかかる誤差範囲の目安ア 表示量が質量又は体積の場合
表示量(単位はグラム又はミリリットル)
誤差
5以上 50以下 5グラム(ミリリットル)
50を超え 300以下 10パーセント
300を超え 1000以下 30グラム(ミリリットル)
1000を超えるとき 3パーセント
(注)パーセントで表された誤差は、表示量に対する百分率とする。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/14_tokuteisyouhin.pdfuteisyouhin.pdf
経済産業省「特定商品一覧表」より。魚は上記の公差表 「表2」となっています。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/14_ryoumoku_kosa.pdf
経済産業省「量目公差表」
魚は上記量目公差表の「表2」となっていますので、魚の量目公差は以下の通りとな
ります。
表(2)
表 示 量
誤 差
5グラム以上50グラム以下 6%
50グラムを超え100グラム以下 3グラム
100グラムを超え500グラム以下 3%
500グラムを超え1.5キログラム以下 15グラム
1.5キログラムを超え10キログラム以下 1%2.法第12条は、特定商品の計量について定めています
計量単位により取引されることの多い消費生活関連物資であって、消費者が合理的な選択を行う上で量目の確認が必要と考えられ、かつ、量目公差を課すことが適当と考
えられるもの(食肉、野菜、魚介類、灯油など29種類)を特定商品として定めており(※特定商品一覧(PDF形式:152KB)PDFファイル参照)、販売事業者がその特定
商品をその特定物象量(特定商品ごとに定められている質量、体積又は面積。※特定商品一覧(PDF形式:152KB)PDFファイル参照)を法定計量単位により示して販売す
る場合には、量目公差(政令で定める誤差)を超えないように計量しなければなりません。
つまり「特定物象量」を「法定計量単位」により示して販売する場合には量目公差を超えないように計量しなければならない、ということです。
特定物象量というのがよくわかりません。
なので多い場合でも量目公差の範囲内に収めておくのが無難ですね。
ちなみにほとんどの魚の量目公差(誤差)の割合は以下のようになっています。
5g以上50g以下 6%
50g超100g以下 3g(最大3%)
500g超1.5kg以下 15g(最大1%)
1.5kg超10kg以下 1%
量が少ないほど、計りづらいためか、許容する量目公差(誤差)割合は大きくなっていますね。
計量法の誤差(量目公差) 最後に
というわけで、誤差は量目公差として認められている、という結論でした。
そして品目によって計量法の誤差が定められていますので、それに従っていれば基本的には問題ありません。
さてそれでは僕がスーパーのバイヤーから聞いた話はなんだったのでしょうか。
ローカルの役人はお上の指導が絶対です。
そのため、中央から離れれば離れるほど、指導の純度が高くなる気がします。
昔でいったら、政権の近くの藩よりも離れた藩のほうが戦国の気風を残していた、ということでしょう。
例えば薩摩藩とか、東北の藩のようなものですね。
へまをしないように厳しく指導しているのでしょうね。
それとローカルスーパーの勉強不足もあると思います。
地方の役人に何か言われても、上記のような知識があれば議論できるわけです。
そうすれば必要以上に恐れることもないですよね。
細かいところまで問い詰めば、向こうも勉強しなおすと思いますよ。
実は私の父は市役所に勤める役人でした。
なので転属して新しい部署に配属されると一所懸命に勉強していましたよ。
ただその知識が追い付かない場合も往々にしてあると思います。
なので地方の農政局で着任したばかりの知識役人には正しい知識で武装して、論破するのが良いと思います。