魚の「なぜ?」を、現場から。

アルゼンチン赤エビとは?船凍・陸凍の違い、サイズ、刺身で食べられるかを水産卸が解説

アルゼンチン赤エビとは?船凍・陸凍の違い、サイズ、刺身で食べられるかを水産卸が解説

スーパーの鮮魚売場や回転寿司でも、すっかりおなじみになった「アルゼンチン赤エビ」。

赤くて大きく、甘みが強いのが特徴です。

私は水産卸の仕事でアルゼンチン赤エビを扱っていますが、このエビは同じ「アルゼンチン赤エビ」でも、漁場や船、凍結方法によって日本での商品形態や品質がかなり違います。

例えば、水産業界でおなじみの有頭2kg箱と、回転寿司などで使われるむき身の寿司ネタ。

同じエビなのに、なぜこんなに姿が違うのでしょうか。

また、同じ船凍・同じL1という規格でも、メーカーやブランドによって品質の安定感に違いを感じることがあります。

水産卸で実際に商品を扱ってきた経験も交えながら、アルゼンチン赤エビについて詳しく解説します。

アルゼンチン赤エビとは?

アルゼンチン赤エビは、南米アルゼンチン沖に生息する天然エビです。

学名は「Pleoticus muelleri」。

名前の通り、加熱する前から赤みが強いのが特徴です。

味は甘みが強く、身質は比較的柔らかめ。

ブラックタイガーやバナメイエビのようなプリプリした弾力とは少し違います。

私は仕事でいろいろなエビを扱っていますが、アルゼンチン赤エビの魅力は、甘みと頭のミソのおいしさ、そして大きさの割に使いやすいことだと思っています。

塩焼きやバーベキューなど、加熱しても非常においしいエビです。

アルゼンチン赤エビの漁場は?

水産業界では「ナショナル」「北部」「南部」など、さまざまな呼び方をすることがあります。

ただし現地の制度で整理すると、大きく、

国の管轄水域(jurisdicción nacional)

と、

州の管轄水域(jurisdicción provincial)

があります。

国水域では大型の冷凍船が操業する一方、チュブ州のRawson(ラウソン)沖などでは沿岸船による漁も盛んです。

日本の水産業界で使われる「ナショナル物」などの呼び方と、現地政府による正式な海域区分は完全に同じではないため、分けて考えた方がよいでしょう。

アルゼンチン赤エビには「船凍」と「陸凍」がある

商品を見るうえで非常に重要なのが、**船凍(船内凍結)と陸凍(陸上凍結)**です。

船凍とは?

船凍は、漁獲したエビを船上で選別・箱詰めし、そのまま凍結します。

漁獲

↓

船上で選別

↓

箱詰め

↓

船上凍結

という流れです。

日本の水産業界でよく見る、

「アルゼンチン赤エビ・有頭・2kg」

は、この船凍品が中心です。

陸凍とは?

一方、鮮魚船の場合は船上で凍結せず、エビを氷などで冷やしながら港まで運びます。

漁獲

↓

船内で保冷

↓

帰港・水揚げ

↓

加工工場

↓

選別・加工

↓

凍結

という流れです。

ここが船凍品との大きな違いです。

なぜ陸凍の赤エビは頭が黒くなりやすい?

これは私たちが商品を扱っていて実際に感じる違いです。

陸凍品は、船凍品と比べて頭部が黒くなりやすい傾向があります。

エビには「メラノーシス」と呼ばれる黒変が起こります。

これは必ずしも腐敗を意味するものではありませんが、頭付きの商品では見た目の商品価値に影響します。

船凍なら漁獲後の比較的早い段階で凍結できます。

一方、陸凍では水揚げして工場へ運んでから凍結するため、どうしても時間がかかります。

そのため陸凍原料は、頭付きで販売するだけでなく、頭を取ったり、殻をむいたりして加工品にするケースがあります。

寿司ネタとして流通するアルゼンチン赤エビも、こうした加工商品の一つです。

つまり、

船凍 → 有頭2kg箱

陸上加工 → むき身・寿司ネタなど

という商品形態の違いには、凍結までの工程も関係しています。

なぜ船凍品は「2kg箱」なの?

水産卸では、アルゼンチン赤エビといえば2kg箱が定番です。

これには現地の生産方法が関係しています。

アルゼンチンの漁業規則では、国水域で操業する冷凍船について、漁獲した赤エビをサイズ別に選別し、丸のまま最大2kgの箱に詰めることが定められています。

つまり、

漁獲 → サイズ選別 → 2kg箱 → 船上凍結

までを海の上で行います。

日本で当たり前のように流通している「2kg箱」は、現地の船上生産の仕組みとつながっているのです。

同じ船凍でも品質は同じではない

ここからは、実際に水産卸で商品を扱っている立場からお話しします。

「船凍なら全部同じ品質なのか?」

というと、そうではありません。

船上で選別・箱詰め・凍結まで行うということは、船の設備や凍結能力、処理のスピード、選別などが最終的な商品の品質に直接影響するということでもあります。

アルゼンチン赤エビの漁船には、建造から年月が経っている船もあります。

一方、比較的新しい船や凍結設備を使って生産している会社もあります。

そのため、同じ「船凍・L1・2kg」という規格でも、ブランドによって品質の安定感に差を感じることがあります。

ARBUMASA(アルブマサ)社のアルゼンチン赤エビ

アルゼンチン赤エビを扱う会社の一つが、ARBUMASA(アルブマサ)社です。

ニッスイもARBUMASA社と協力してアルゼンチン赤エビを取り扱っています。

ニッスイによると、漁獲されたエビを船上で急速凍結し、現地での品質チェックなどを行いながら日本へ輸入しています。

ARBUMASA社自身の資料を見ると、有頭アルゼンチン赤エビは漁獲後、船上で処理され、トンネルフリーザーで凍結されています。

荷姿は日本でもおなじみの2kg箱です。

さらに2025年には、ARBUMASA社の複数の船で生産される船上凍結・有頭アルゼンチン赤エビが、アルゼンチン政府の品質認証制度「Alimentos Argentinos, una Elección Natural」の対象として認められています。

「船凍」という言葉だけでは見えてこない、どの会社・どの設備で作られた商品なのかという部分も、品質を見るうえでは重要なのです。

※参考:ニッスイ「アルゼンチン赤えび」
https://www.nissui.co.jp/product/akaebi/index.html

ランザルブランドは品質の安定感が高い

私が水産卸の仕事で見てきた中では、ランザルブランドは品質の安定感が高いと感じています。

水産物は自然のものですから、通常は入荷するたびに状態を確認することが重要です。

しかし品質が安定しているブランドについては、

「このブランドなら大丈夫」

という信用で取引されることがあります。

ランザルは、まさにそうしたブランドの一つです。

業務用食品販売サイトのMマートでもかつて、ランザルについて「品質の安定力が高い」と評価し、比較的新しい船や凍結設備を使用していることが品質につながっているのではないか、と紹介されていました(現在では当該ページはありません)。

もちろん、

「船が新しい=必ず品質が良い」

という単純な話ではありません。

これは販売事業者による評価でもあります。

ただ、船上で商品を完成させる船凍品では、凍結設備や船上での処理能力が品質に関係するという考え方は非常に分かりやすいと思います。

アルゼンチン赤エビは、産地とサイズだけではなく、メーカー・船・ブランドを見るのも一つの選び方です。

L1・L2・L3とは?アルゼンチン赤エビのサイズ

アルゼンチン赤エビには、

L1

L2

L3

L4

などのサイズ規格があります。

基本的には、数字が小さいほど大きなエビです。

ARBUMASA社が示している有頭品の規格では、

  • L1:10~20尾/kg
  • L2:21~30尾/kg
  • L3:31~40尾/kg
  • L4:41~60尾/kg

となっています。

例えばL1なら、1kgに10~20尾です。

2kg箱なら単純計算で20~40尾程度になります。

同じ「アルゼンチン赤エビ」でも、L1とL4では見た目のボリュームがかなり違います。

最近L1・L2の大きな赤エビが多いのはなぜ?

近年、私たちの仕入れ現場ではL1・L2の大型サイズが多く、反対に小さいサイズが少ないと感じています。

これは単純に「小さいエビがいなくなった」という話ではありません。

アルゼンチン赤エビでは、幼いエビが多く生息する海域を保護する資源管理が行われています。

小さいうちは漁獲せず、成長して移動したエビを漁獲する仕組みも、大型中心の商品構成になる理由の一つと考えられます。

つまり、

「海に小さい赤エビがいない」

ことと、

「日本市場にL3・L4が少ない」

ことは同じ意味ではありません。

2025年は操業が大幅に遅れた

2025年はアルゼンチン赤エビにとって特殊な年でした。

国水域では漁場が開いたものの、操業コストや船員側との賃金交渉などの問題から、冷凍船団の本格的な出漁が大幅に遅れました。

私たち日本の仕入れ現場でも、

大型サイズが多い

小型サイズが少ない

供給量が少ない

という状況を感じました。

実際、2025年8月のINIDEP(アルゼンチン国立水産研究開発研究所)の調査では、冷凍船で生産された赤エビのうち、

L1が49%、L2が47%

を占めました。

L1・L2だけで96%です。

ただし、2024年からすでに大型中心の傾向は確認されています。

そのため、

「2025年の操業遅延だけで大型化した」

と断定するのではなく、

もともとの大型傾向+資源管理+2025年の異例の操業遅延

などが重なったと考えるのがよさそうです。

2026年も価格が高く、小型サイズが少ない

2026年現在も、私たちの仕入れ現場では、

「価格が高い」

「小さいサイズが少ない」

という状況を感じています。

一方、2026年は現地の漁獲量自体は回復しています。

したがって、

「アルゼンチンで赤エビが獲れていないから高い」

と単純には説明できません。

前年からの供給状況、在庫、サイズ構成、国際相場など複数の要因が、日本での仕入価格に影響していると考えた方が実態に近いでしょう。

※この項目は2026年9月時点の状況です。

アルゼンチン赤エビは刺身で食べられる?

ここは非常によく聞かれるところです。

結論からいうと、

アルゼンチン赤エビだから生食できる・できない、と一括りにはできません。

商品ごとに確認する必要があります。

スーパーなどで「生食用」「刺身用」として販売されている商品なら、その表示に従って食べることができます。

「2kg船凍品=加熱用」とは限らない

ここは私自身も整理しておきたいところです。

水産業界では、

「2kg船凍品は加熱用」

「生食用として通関していない」

という説明をすることがあります。

確かに、そのような用途の商品はあります。

しかし、

「有頭2kg船凍品だから生食できない」

と一律に考えるのも正確ではありません。

実際、ニッスイがARBUMASA社と協力して販売しているアルゼンチン赤エビについては、船上急速凍結によって鮮度を保ち、生食でも食べられる商品として紹介されています。

つまり重要なのは、

船凍か陸凍かだけで生食の可否を判断しないこと

です。

同じアルゼンチン赤エビの船凍品でも、商品によって品質管理や用途が違います。

「生食用として通関していない」という表現にも注意

厚生労働省の規格でいう「生食用冷凍鮮魚介類」は、冷凍食品のうち、切り身またはむき身にした鮮魚介類で、生食用として凍結したものを指します。

一方、一般的な2kg船凍アルゼンチン赤エビは、

有頭・殻付き・丸のまま

です。

そのため、

「生食用として通関していないから食べられない」

とだけ説明すると、制度上の意味を単純化しすぎる場合があります。

消費者として大切なのは、通関区分を推測することではなく、実際に販売されている商品の用途表示を確認することです。

刺身で食べるなら商品の表示を確認する

船凍アルゼンチン赤エビには、漁獲後すぐに凍結された非常に鮮度の良い商品があります。

そして実際に生食できる商品もあります。

しかし、

「船凍だから刺身OK」

と自己判断するのはおすすめしません。

生食用・刺身用として販売されている商品は生食する。

加熱用として販売されているものは加熱する。

これが一番分かりやすい選び方です。

寿司ネタのアルゼンチン赤エビは?

回転寿司などでもアルゼンチン赤エビを見かけます。

寿司ネタ用の商品には、むき身などに加工し、生食用途の商品として製造されたものがあります。

一方、一般的な2kg船凍品は有頭・殻付きの商品です。

ただし、先ほど紹介したように、船凍有頭品でも生食できる商品があります。

したがって、

「寿司ネタだから生食できる」「2kg有頭だから生食できない」

という形だけで判断するのではなく、商品の表示やメーカーの案内を確認してください。

スーパーでアルゼンチン赤エビを選ぶポイント

私ならまず殻の状態を見ます。

長期間冷凍保管されたものは乾燥し、殻が白っぽくなっていることがあります。

冷凍焼けが強くないものを選びたいところです。

頭部の黒変も確認します。

多少の黒変は必ずしも腐敗を意味しませんが、見た目や品質を考えれば、できるだけ状態の良いものを選びたいですね。

業務用の商品なら、

サイズだけでなくメーカーやブランドを見る

という選び方もあります。

そして生で食べたい場合は、必ず「生食用」「刺身用」などの表示、またはメーカー・販売者の案内を確認してください。

アルゼンチン赤エビは加熱してもうまい

個人的には、有頭のアルゼンチン赤エビは加熱して食べるのも大好きです。

塩焼き、バーベキュー、アヒージョ、パスタ、鍋などによく合います。

特に頭付きのまま加熱すると、ミソから非常に良い味が出ます。

ブラックタイガーなどと比べると身は柔らかめですが、甘みとミソの旨味はアルゼンチン赤エビならではです。

まとめ|アルゼンチン赤エビは「漁場・船・ブランド」まで見ると面白い

アルゼンチン赤エビは、単に「アルゼンチンで獲れる赤いエビ」というだけではありません。

漁場、船、凍結方法によって日本での商品形態が変わります。

船凍なら、

漁獲 → 船上選別 → 2kg箱 → 船上凍結

という流れ。

陸上加工なら、

漁獲 → 保冷 → 水揚げ → 工場 → 加工・凍結

という流れになります。

さらに同じ船凍品でも、船の設備やメーカー、ブランドによって品質の安定感に違いがあります。

水産卸の現場では、ランザルのように「このブランドなら」と信用で取引される商品もあります。

また近年はL1・L2の大型サイズが中心で、2025年の異例の操業遅延を経て、2026年現在も小型サイズの少なさや価格の高さを感じています。

そして生食について最も重要なのは、

「船凍だから食べられる」「2kg箱だから食べられない」と決めつけないこと。

実際に船凍有頭品でも生食できる商品があります。

刺身で食べる場合は、商品の「生食用」「刺身用」という表示や、メーカー・販売者の案内を確認してください。

アルゼンチン赤エビは、L1・L2というサイズだけでなく、どこで獲れ、どの船で凍結され、どのブランドとして日本へ来たのかまで見ていくと、非常に面白い水産物です。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

コメント Comments

コメント一覧

コメントはありません。

コメントする

トラックバックURL

https://fish-neta.com/argentine-red-shrimp/trackback/

関連記事 Relation Entry