魚の「なぜ?」を、現場から。

身欠きにしんとは?どんな食べ物?名前の由来や食べ方を水産卸が解説

身欠きにしんとは?どんな食べ物?名前の由来や食べ方を水産卸が解説

「身欠きにしんって何?」

スーパーの魚売場などで見かけることがありますが、名前だけではどんな食べ物なのか分かりにくいですよね。

身欠きにしんとは、簡単にいうと、

ニシンの頭や内臓などを取り除き、乾燥させた保存食品です。

こんなやつです。

こんなやつです。

昔は冷蔵設備がありませんでした。

そのため、傷みやすいニシンを長期間保存し、遠くまで運べるように乾燥させたのが身欠きにしんです。

私は水産卸の仕事で身欠きにしんを扱ってきました。

この記事では「身欠きにしんとは何なのか?」を中心に、作り方や名前、種類、昔から食べられてきた理由などを分かりやすく紹介します。

身欠きにしんとは?

身欠きにしんは、ニシンを乾燥させた加工食品です。

一般的にはニシンの頭や内臓などを取り除いて干します。

今のように冷蔵・冷凍技術が発達していなかった時代、生の魚を遠くまで運ぶのは簡単ではありませんでした。

そこで水分を減らし、保存しやすくしたわけです。

身欠きにしんは単なる「ニシンの干物」というより、

昔の日本の水産物流を支えた保存食品

と考えると分かりやすいと思います。

身欠きにしんはどうやって作る?

昔ながらの身欠きにしんは、おおまかにいうと、

ニシンを処理する

↓

頭や内臓などを取り除く

↓

身を干す

↓

乾燥させる

という方法で作られます。

しっかり乾燥させた身欠きにしんは驚くほど硬くなります。

初めて見る人なら、

「これ、本当に食べられるの?」

と思うかもしれません。

しかし、水分を戻して煮るなどすると、乾燥魚ならではの旨味を楽しめます。

現在では昔ながらの硬いタイプだけでなく、乾燥を弱くして調理しやすくした商品も販売されています。

「身欠きにしん」の名前の由来は?

農林水産省では、生のニシンは日持ちしないため、**腹の身を欠いて乾燥させて保存したものが「身欠きにしん」**と紹介されています。

「身欠き」という名前も、ニシンを加工して身を干したことに由来すると考えると分かりやすいでしょう。

ちなみに「ニシン」という魚自体の名前についても諸説あります。

農林水産省では、身欠きにしんを作る際に身を二つに割いて干したことから「二身(にしん)」と呼ばれるようになった、という説も紹介されています。

ただし、これはあくまで名前の由来に関する一説です。

なぜニシンをわざわざ乾燥させたの?

最大の理由は、

保存と輸送です。

現在ならニシンを冷蔵・冷凍して運べます。

しかし昔はそうはいきません。

特に北海道ではかつてニシン漁が盛んでした。

大量に獲れたニシンを加工して保存しやすくすることで、北海道から遠く離れた地域まで運べるようになりました。

その代表的な加工品が身欠きにしんです。

身欠きにしんは北前船で全国へ

身欠きにしんの食文化を語るうえで重要なのが「北前船」です。

江戸時代から明治時代にかけて、北海道や東北、日本海側と関西などを結んだ北前船によって、ニシンや昆布などの海産物が各地へ運ばれました。

生のニシンは傷みやすい。

しかし乾燥させた身欠きにしんなら遠くまで運ぶことができます。

そのため身欠きにしんは、

新潟

福井

京都

東北地方

内陸地域

などにも広まり、それぞれの地域で独自の料理が生まれました。

現在各地に身欠きにしん料理が残っているのは、昔の物流の名残でもあるのです。

新潟でも身欠きにしんは昔から食べられてきた

私のいる新潟県にも、身欠きにしんを使った郷土料理があります。

その一つが、

身欠きにしんの糀漬け

です。

身欠きにしんを戻し、野菜などと一緒に糀で漬けます。

ほかにも、

ぜんまいとの煮物

酢の物

山椒漬け

などに利用されてきました。

海から離れた山間部まで運べる身欠きにしんは、昔の人にとって貴重な魚だったのでしょう。

身欠きにしんには「本乾」「8分乾」「ソフト」などがある

スーパーや魚屋で身欠きにしんを見ると、

本乾

8分乾

ソフト身欠きにしん

などと書かれていることがあります。

これは主に乾燥具合の違いです。

昔ながらのしっかり乾燥させたものは非常に硬く、調理前に戻す必要があります。

一方、現在では乾燥を弱くして扱いやすくした商品もあります。

ここを詳しく説明すると長くなるので、

「本乾・8分乾・ソフト身欠きにしんの違い」

については別の記事で詳しく紹介しています。

【内部リンク:本乾・8分乾・ソフト身欠きにしんの違い】

身欠きにしんはそのまま食べられる?

これもよく聞かれる疑問です。

特に「ソフト身欠きにしん」を見て、

「ソフトならそのまま食べられるの?」

と思う人もいるでしょう。

ただし、

「やわらかい」「戻さず調理できる」と「加熱せずそのまま食べられる」は別の話です。

商品によって加工状態も異なるため、表示を確認する必要があります。

この点については別の記事で詳しく解説しています。

【内部リンク:ソフト身欠きにしんはそのまま食べられる?】

身欠きにしんはどうやって食べる?

身欠きにしんは日本各地でさまざまな料理に使われています。

代表的なのは、

にしんそば

甘露煮

昆布巻き

にしんなす

ニシン漬け

糀漬け

などです。

京都では、甘辛く煮た身欠きにしんをそばにのせた「にしんそば」が有名です。

また、なすと一緒に煮る「にしんなす」もあります。

新潟では先ほど紹介した糀漬けなどがあります。

同じ身欠きにしんでも地域によって食べ方が違うのが面白いところです。

身欠きにしんは海のない地域でも貴重な魚だった

身欠きにしんについて調べると、海から離れた地域の郷土料理にも登場します。

これには理由があります。

乾燥させて保存性を高めたことで、生魚を運ぶことが難しかった内陸部にも魚を届けられたからです。

今ならスーパーへ行けば、山間部でも刺身や生魚が買えます。

しかし昔はそうではありません。

そのため身欠きにしんのような保存食品は、内陸部では貴重なたんぱく源として利用されてきました。

身欠きにしんは、

「冷蔵庫のない時代に魚を遠くまで届けるための知恵」

でもあったわけです。

身欠きにしんは今でも水産売場で販売されている

冷蔵・冷凍技術が発達した現在でも、身欠きにしんは販売されています。

これは単に保存する必要があるからではありません。

乾燥させたニシンには、生のニシンとは違った風味や食感があります。

農林水産省も、身欠きにしんなどの乾物について、乾燥によって生鮮時とは異なる風味や食感になると説明しています。

つまり現在の身欠きにしんは、

保存食であると同時に、乾燥によって生まれる味を楽しむ食材

ともいえます。

身欠きにしんとは?まとめ

身欠きにしんとは、

ニシンの頭や内臓などを取り除き、乾燥させた保存食品です。

冷蔵・冷凍設備がなかった時代、傷みやすいニシンを保存し、遠くまで運ぶために作られてきました。

北前船などによって各地へ運ばれた結果、

にしんそば

にしんなす

昆布巻き

ニシン漬け

糀漬け

など、地域ごとにさまざまな料理が生まれました。

また、現在販売されている身欠きにしんには、本乾・8分乾・ソフトなどがあります。

身欠きにしんは単なる「昔の保存食」ではありません。

昔の水産加工、物流、そして各地の食文化まで見えてくる面白い食材です。

水産卸の仕事をしている私から見ても、昔の人の知恵を感じる魚加工品の一つです。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

コメント Comments

コメント一覧

コメントはありません。

コメントする

関連記事 Relation Entry